新種牡馬診断
今年の目玉キングカメハメハ、ネオユニヴァースのダービー馬2頭を含めた注目新種牡馬8頭を森徹也が解説!
Part 1
キングカメハメハ
産駒一覧
-
-
Kingmambo
1990Mr. Prospector Miesque マンファス
1991 黒鹿毛ラストタイクーン Pilot Bird - 競走成績:8戦7勝
-
- 主な勝ち鞍
- 04年 日本ダービー
- 04年 NHKマイルC
-
ナスキロを注入して
新馬、エリカ賞を連勝。この頃はしぶとさはあっても切れるイメージはなかったが、京成杯で3着に敗れて、すみれSあたりから変貌。切れる脚を使えるようになってきた。その後は破竹の勢いでNHKマイルC、日本ダービーをともに完勝。変則2冠馬となった。
デビュー当初は前述のとおりKingmamboのパワーが表現されているのだろうと思っていたが、母が欧州血脈で、その血が開花してきたか、意外なほどの切れ味をみせた。
良質な繁殖牝馬が集まって、200頭近くの産駒がいて、“社台”とくれば、下ごしらえだけは揃いまくっている。確率的にどうなるかはともかく、何頭かのクラシック戦線を賑わす馬を送り出してくる可能性はあるだろう。しかしながら育成場などの古くからの友人たちと会話をしていると、あまりいい話は出てこない。「四角ばった馬が多い」、「さばきの硬い馬が多い」、「気性が荒い」などなど…。特に「セリに出てきた中でいいなあという馬はいなかったなあ」と聞く。Kingmambo的なパワーが前面に出やすいのかもしれない。
芝クラシック路線に向かわせながら、なかなか結果が出ずに、ダートに路線変更してようやく結果をというケースは出てきそうだ。
クラシック路線を目指すには、いかに柔軟性を引き出すか、ということになってくるだろう。
まずは母の父サンデーサイレンスというのがわかりやすいパターンだろう。そして、キングカメハメハの母の父がラストタイクーンで、この母の父がMill Reef。この血を生かしたいところだろう。
Mill Reefは『Nasrullah+Princequillo』の通称“ナスキロ”の組み合わせ。これが柔らかさや切れを引き出してきたケースは数多く見られる。たとえばフレンチデピュティの芝馬にこの“ナスキロ”を生かした配合パターンが多く見られる。
『Nasrullah(≒Royal Charger)+Princequillo』を有す血にはSir Gaylord、Caerleon、Secretariat、Seattle Slewなどがある。
ラストタイクーンにスポットを当てると今年の3歳世代でモンテクリスエス、ランチボックスと父シンボリクリスエスで母の父として2頭の2勝馬を送り出している。シンボリクリスエスはSeattle Slewを有していた。
母の父サンデーサイレンスでなおかつ“ナスキロ”を生かした配合の、エオリアンハープやルシルフ、母が“ナスキロ”の組み合わせを2本もっているキングヴィオラに注目したい。
プリサイスエンド
産駒一覧-
エンドスウィープ
1991 鹿毛フォーティナイナー Broom Dance Precisely
1987Summing Crisp 'n Clear - 競走成績:9戦4勝
-
- 主な勝ち鞍
- 00年 ベイショアS(米 GIII)
馬主孝行の堅実味
米国で9戦して[4-1-4-0]。ダート7ハロンのGIII、ベイショアSを5馬身差の圧勝。
米国で供用された4世代は、80%近い勝ち上がり率だったという。我が国にもセイウンビバーチェ、エスユープリサイス、ハッスルシチーと3頭がすでに走っていて、すべてが勝ち上がっている。セイウンビバーチェは札幌2歳Sで3着。自身の競走成績と同様に種牡馬としても堅実味を発揮している。
Mr.Prospector系エンドスウィープ産駒で母はNasrullah多重配合(5・5×6・5)だから、一見はダートスプリンターっぽいのだが、前述の我が国の3頭しかりで、産駒はそうでもない。エスユープリサイス、ハッスルシチーはダート1600mで1勝。セイウンビバーチェは芝1600m、芝1800m、芝2000mでそれぞれ1勝。この3頭、いずれもがMr.Prospectorのクロスを有しながら、この成績だ。
母が「Nasrullah+Princequillo」の組み合わせを2本有していて、これが芝対応の柔軟性、スプリンターというよりマイラー化する要因になっているのかもしれない。
配合相手には「Nasrullah+Princequillo」は意識下に置いておきたい。米国に残してきた産駒の重賞勝ち馬Sherineの母が「Royal Charger(≒Nasrullah)+Princequillo」のSir Gaylordを有していた。
産地とやりとりすると、「いかにもスピードがありそうな体型」とか、「節々がしっかりした作りの馬が多いよ」という声が聞こえてくる。
大物が出るかどうかはともかく、確実性の高い種牡馬として馬主孝行の産駒を送り出してきそうだ。アーリントンCであるとか1600m近辺のGIII勝ち馬ぐらいは輩出してくるのではないか。POGのラインナップに加える価値はあるだろう。
Mr.Prospectorのクロスを有して、なおかつ「Nasrullah+Princequillo」の組み合わせを生かした配合のディアーブリーズの仔、コールドフロントの仔やヴィーヴァヴァントに注目しておきたい。
- 注目馬
-
牝 ディアーブリーズの2006 母ディアーブリーズ(母の父Grand Slam) 牡 コールドフロントの2006 母コールドフロント(母の父Storm Cat) 牡 ヴィーヴァヴァント 母ドリームシーン(母の父Sadler's Wells)
イーグルカフェ
産駒一覧-
Gulch
1984Mr. Prospector Jameela Net Dancer
1989Nureyev Doubles Partner - 競走成績:46戦5勝
-
- 主な勝ち鞍
- 02年 ジャパンカップダート(GI)
- 00年 NHKマイルC(GI)
ヌレイエフの粘っこさ
3歳時に共同通信杯、NHKマイルCを制すが、その後は低迷が続く。しかし、2年後に七夕賞で久々に勝ち鞍をあげ、その秋にはジャパンCダートを制した。このジャパンCの前には、マンハッタンカフェの帯同でフランスに遠征して、ドラール賞(GII、芝1950m)で3着に健闘している。
父はGulchで全兄のハセノガルチはダート馬だった。本馬もジャパンCダートを制しているのだから、そういったパワフルな面はあったのだろうが、母の父Nureyev的な芝での粘っこい走りが本質だったように思う。Gulchの母の父RambunctiousがHyperion系×Fair Tria系という配合で、これはNureyevの母の父Forliと共通する。この組み合わせの妙が表現されていたのかもしれない。
ダート向き、芝向き双方のタイプを輩出してくると思うが、Gulch産駒の上級馬はブレーブテンダー(アーリントンC1着、NHKマイルC2着)、ホッコービューティ(シンザン記念2着、フラワーC2着)と芝で結果を出している。イーグルカフェと同様にNureyev的な芝1800m近辺で粘っこい走りをする産駒が出てくるでのはないだろうか。
産駒をながめているとダンスインザダークを母の父にもつ馬が4頭もいた。実はイーグルカフェはダンスインザダークと同じ牝系で、このあたりを意識した意図的な配合に思える。ちなみにこの4頭の母はインスパイヤダンス、スイングトゥバップ、ハイフレンドハントにフロレアーナ。この中でもHyperion系×Fair Trial系の組み合わせを有すスイングトゥバップに注目したい。
ちなみにダンスインザダーク×Nureyevの組み合わせには、トーホウアラン(中日新聞杯)、コンラッド(ラジオたんぱ賞)と2頭の重賞勝ち馬がいる。
- 注目馬
-
牝 インスパイヤダンスの2006 母インスパイヤダンス(母の父ダンスインザダーク) 牝 スイングトゥバップの2006 母スイングトゥバップ(母の父ダンスインザダーク) 牝 ハイフレンドハントの2006 母ハイフレンドハント(母の父ダンスインザダーク) 牝 フロレアーナの2006 母フロレアーナ(母の父ダンスインザダーク)
シルバーチャーム
産駒一覧-
Silver Buck
1978Buckpasser Silver True Bonnie's Poker
1982Poker What a Surprise - 競走成績:24戦12勝
-
- 主な勝ち鞍
- 98年 ドバイワールドC(首 GI)
- 97年 プリークネスS(米 GI)
- 97年 ケンタッキーダービー(米 GI)
ラ・トロワンヌを生かせ
ケンタッキーダービー、プリークネスSを勝った2冠馬。三冠に挑んだベルモントSは惜しくも3/4馬身差の2着に敗れた。翌年はドバイワールドCを制している。
2000年より米国で種牡馬となったが、まだGI勝ち馬は輩出していない。それどころかグレード競走勝ち馬は1頭だけしかいない。
我が国では5頭の産駒がデビューしている。このうちマルブツシルヴァー、ツルマルシルバーにビーアヘッドの3頭が勝ち上がっている。エイシンセーアンは中央では1戦して未勝利だったが、岩手競馬で8連勝した。少ないサンプルながら、勝ち上がり率は上々と言えるだろう。
父系はBuckpasser、Tom Fool、Menowと辿れる系統で、母の父PokerはRound Table、Princequillo、Prince Roseと辿れる系統。ともに傍系といえるラインになる。しかし、ともに母の父であるとか、母系に入って存在感を示す血で、将来はシルバーチャームを有する繁殖牝馬から上級馬が何頭も生まれてくるのではないかと思える。
血統表を眺めていて目に入ってくるのが、La Troienneの孫のBusanda≒Strikingの3×4のクロス。前述の中央で勝ち上がった3頭の配合をチェックしてみた。マルブルシルヴァーはBusandaの息子Buckpasserの3×4、Pokerの母でStrikingの娘のGlamourの4×5、ツルマルシルバーはBuckpasserの3×5、ビーアヘッドはBuckpasserの3×4のクロスを有していた。配合のカギはやはり、このLa Troienne血脈を生かすことだろう。
傍系の色が濃くて、米国でも決して成功したとは言えないので種牡馬としてはどうか?と思っていたが、産駒の配合をチェックすると3割以上がこのLa Troienne血脈を生かしていた。案外、高い率で勝ち上がってくるかもしれない。
La Torienneを有する血脈の中でも注目しているのがCaerleon。その母のForeseerがPokerと似通った血統構成になっている。この組み合わせ配合の妙を期待したくなる。
母の父がCaerleonのニシノリスペクト、祖母の父がCaerleonのナムラウタヒメの仔、Caerleonの妹ラーセニーの仔に注目したい。
- 注目馬
-
牡 ニシノリスペクト 母ニシノブルーライト(母の父Caerleon) 牝 ナムラウタヒメの2006 母ナムラウタヒメ(母の父フォーティナイナー) 牝 ラーセニーの2006 母ラーセニー(母の父Private Account)
ライタープロフィール
-
- 森徹也
- 東海公営の専門紙記者、中央の専門紙記者として歩み、週刊競馬通信にもライターとして参画。のちに、フリーに。名古屋競馬の騎手や関係者とも親交が深く、中央、地方、週平均70レース以上の馬券を購入する日々。馬主さんから配合の依頼を受け、血統屋としても奮闘中で、地方発、あるいはマイナー種牡馬からビッグネームを生み出すのが密かな夢。
