須田さんのひとりごと
セール取引馬では、どうしても1億円前後の高額取引馬に目を奪われがちだが、今年は、3000万〜4000万前後で取引きされた中価格帯の馬が重賞戦線で活躍を見せ、皐月賞に駒を進めている。こうした結果から、セール馬を指名する際、気をつけるべき点を挙げてみた。
第24回 皐月賞登録馬から見えたセール馬の指名法
今年の皐月賞は収得賞金のハードルが高すぎて、逆に登録馬が20頭しかいないという珍現象を生んだ。
今回はその登録馬から、先週に引き続きPOGのヒントを拾っていきたいと思う。ちなみに編集部からは「須田さんの指名馬と絡めつつ」というオーダーもあったのだが、本世代の私の指名馬はひどい有様であり、絡めたくても絡めようがない。
まず人気が予想されるマイネルチャールズ(牡、母マイネプリテンダー)だが、赤本を振り返っても真歌の2番手で、ビッグレッドファームに強いはずの浅野(靖典)さんでも無印。ブライアンズタイム産駒で稲葉隆一厩舎だから、一昔前だったら指名できそうなものだが、逆に昨今の状況では難しくなってしまった印象だ。
ちなみに、桜花賞トライアルを勝ったマイネレーツェルに至っては触れられておらず、リストにも未収録。こちらに至っては、浅野さんは「売っている人」(八戸市場の司会)だったのに……。いつの時代もマイネルの取捨は難しく、速攻タイプを下位で、という狙い方に集中したほうがいいのかもしれない。
一方、メンバーを見渡して「どの馬がいちばん指名しやすかったか」ということを考えると、おそらくキャプテントゥーレ(牡、父アグネスタキオン、母エアトゥーレ、栗東・森秀行厩舎)だろう。早期デビューの情報は早くから伝わっていたし、血統の裏付けもある。
牝馬におけるポルトフィーノもそうだが、やたらと早期にデビューする血統価値の高い馬には、今まで以上に評価を与えてもいいのかもしれない。特に森厩舎や角居厩舎のような馬房回転の逼迫(ひっぱく)した厩舎は、勝算がなければわざわざ早くに入れないはず。そして、「早熟度勝負じゃないんだけど早いうちにひとつは勝てる」というのは、馬そのもののレベルの高さを示すものでもある。
今年あたりは、「えっ、もうデビューするの!?」という良血馬を1頭指名することを検討したい。ただ、赤本編集時にはデビュー情報まで把握できないのが残念である。
そして、皐月賞メンバーから得られるPOG上の教訓をもうひとつ。最初に趣旨をまとめると、「日本は良血だらけの国になった」ということである。
タケミカヅチ(牡、父ゴールドアリュール、母カズミハルコマ)は、募集価格2000万円のクラブ馬で大江原哲厩舎。スズジュピター(牡、父タニノギムレット、母ジュピターズジャズ、美浦・高橋裕厩舎)、フサイチアソート(牡、父トワイニング、母アーネストデザイア、美浦・岩戸孝樹厩舎)、そして、回避を表明しているものの登録はしていたアドマイヤコマンド(牡、父アグネスタキオン、母トコア、栗東・橋田満厩舎)はセレクトセールで3000〜4000万円前後の高馬ではあるが、超高馬ではない。
クラブの値付け(&厩舎決定)やセール時点では予知できないだけの伸びシロを持った馬たちが、いまではかなりの頭数いるということである。日本全体の血統レベルが上がった結果、セール価格でいう「上の上」と「中の上」のあいだに、それほどの差がなくなってきたとも言える。
ドラフト時にはどうしても「値段の高い(あるいは高そうな)順に順調度などを考慮し、枠が埋まった時点で終わり」ということになってしまいがちだ。しかし、2000〜3000万円クラスに好素材はごろごろしているのである。少なくとも、「ドラフト時点で順調でないと言われている高額・超良血馬の逆転」に賭けるよりは、そういった馬に賭けるほうが価値があると言えるだろう。当たったときのカッコ良さを考えるとなおさらだ。
※ 皐月賞も大波乱?詳しくはnetkeibaコラム「回収率向上大作戦」へ
次回の公開は5月1日(木)です。
PROFILE
- 須田鷹雄
- 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。大学在学中に別冊宝島「競馬ダントツ読本」でデビュー。以後、競馬雑誌の急増を受けて競馬ライターとしての活動をはじめる。平成6年、JR東日本に就職し、西船橋駅に配属。平成8年、JR東日本を退社し、本格的にライター業をスタートさせる。各種新聞・雑誌に寄稿するほか、テレビ・ラジオにも出演。POG(ペーパーオーナーゲーム)の達人としても知られ、監修を務める「POGの達人攻略ガイド」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書といわれている。主な出演番組にクラシックパーク(グリーンチャンネル)、ドラマチック競馬(北海道文化放送)ほか。「競馬総合チャンネル」や「netkeiba.com」でもコラムを連載中。
