須田さんのひとりごと
ポストSSとして日本にやって来たウォーエンブレム。わずか4頭だった初年度産駒がすべて勝ち上がると、2世代目となる現3歳33頭のうち3頭が重賞制覇。クラシック路線で活躍中の同産駒を08年POGで指名しないわけにはいかない。そこで指名する際に気をつけたいポイントを挙げてみた。
第22回 “走る”ウォーエンブレム産駒を見抜くには?
ウォーエンブレム産駒の好調が続いている。
キングスエンブレム(牡、母スカーレットレディ、栗東・石坂正厩舎)こそ若葉S(OP)で人気を裏切ったものの、ブラックエンブレム(牝、母ヴァンドノワール、美浦・小島茂之厩舎)がフラワーC(GIII)に優勝。ショウナンアルバ(牡、母シャンラン、美浦・二ノ宮敬宇厩舎)もスプリングS(GII)で3着を確保した。出入りの激しい3歳牡馬戦線において、トライアル3着も上等の部類だろう。
すでにエアパスカル(牝、母ラフィカ、栗東・池江泰寿 厩舎)がチューリップ賞(GIII)を勝っていることもあって、今年のドラフトではウォーエンブレム産駒の人気が高まることは必至。しかも、今年は産駒が5頭と初年度に続いて少ないため、場合によっては激しい争奪戦になることが予想される。
最終的に指名する・しない、どちらの結論を選ぶにせよ、状況を分析しておくことは必要。今回本欄で考えておこう。
いきなり結論から書いてしまうが、個人的にはウォーエンブレム産駒の中から「当たり」を一本釣りすることは難しい、よって指名しないか、指名するにしても1頭に絞って運命を託すのがよいと考えている。これはウォーエンブレム産駒がダメだということではなく、「難しい」というのが妥当な表現だ。
まず、初年度産駒と2年目の産駒で、まったく傾向が違う。
初年度産駒への評価は「全頭勝ち上がりはしたが、詰めが甘くパンチに欠ける」というようなものであった。
クランエンブレムや、勝ち上がる前のアドマイヤミリオンは典型的な惜敗キャラ。一方で、最初どうにもならないかと思われたショウナンライジンが勝ち上がるなど、ヘッジが効いた印象はあった。
一方、2年目の産駒は重賞級が出る一方で、未出走・未勝利馬が多く見られる。全体の頭数が増えたのだからバラつきが出るのは当然だが、それにしても初年度に比べたら標準偏差が大きくなった。
難しさの2つめは、好走馬に一定の傾向が無いことだ。
生産は、ショウナンアルバを除いて社台グループばかりなのでヒントは無いし、好走馬の母系にも共通項がない。一般的に成功例が少ないと言われるミスプロ×ミスプロの配合からもブラックエンブレム(母の父へクタープロテクター)が出たし、とにかくヒントらしいヒントが無い。
常識論でいえば「気性難のありそうな血統(母馬)は避ける」というようなことになるのだが、気性難血統の代名詞的存在であるオーピーキャットの血統からもエアパスカルが出たので、そうも言えない。
実際、世間がイメージするほどひどい気性難というのは無いそうで、ノーザンファームの秋田博章場長は「気性難×気性難だと、打ち消し合うんじゃないの(笑)」とも言っている。
ただ、これまでの産駒を見た限り、丸っきり気性に荒いところのある馬よりは、「気性難のリスクがある→それを克服」というパターンのほうが良いようだ。キングスエンブレムなどは典型的なこのパターンである。
…と長々書いてみたが、今年の2歳産駒は5頭のみなのだから、どれを一本釣りするか決めてしまったほうが話は早い。
5頭のうち、ノーザンF早来で育成されているのが2頭。母イサドラ(牡)と母ヴァンドノワール(牝)。母イサドラは血統の字面とは違って気性の問題は無いとのこと。母ヴァンドノワールはブラックエンブレムの全妹でもちょっとタイプが違うというのでドラフト直前まで観察したい。
残り3頭はいずれもノーザンF空港で育成中。母クリックヒア(牡)、母ダディーズシューズ(牡)、母ディアアドマイヤ(牡)。いずれも順調そうだ。個人的には母イサドラと母ディアアドマイヤを検討中。赤本のおすすめ10頭を決めるまでに結論を出したい。
次回の公開は2008年4月10日(木)の予定です
PROFILE
- 須田鷹雄
- 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。大学在学中に別冊宝島「競馬ダントツ読本」でデビュー。以後、競馬雑誌の急増を受けて競馬ライターとしての活動をはじめる。平成6年、JR東日本に就職し、西船橋駅に配属。平成8年、JR東日本を退社し、本格的にライター業をスタートさせる。各種新聞・雑誌に寄稿するほか、テレビ・ラジオにも出演。POG(ペーパーオーナーゲーム)の達人としても知られ、監修を務める「POGの達人攻略ガイド」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書といわれている。主な出演番組にクラシックパーク(グリーンチャンネル)、ドラマチック競馬(北海道文化放送)ほか。「競馬総合チャンネル」や「netkeiba.com」でもコラムを連載中。
